ゼア・ウィルビー・ブラッド

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [DVD]

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [DVD]


これは凄い。2時間半の映画ながら、一瞬たりとも画面から目が離せなかった。一歩間違えば、2時間の睡眠時間にもなりかねない映画だと思うけど、時間の長さを感じさせなかった。ダニエル・デイ=ルイスの怪演がこの作品を支えているのは間違いないのだけど、映画自体がとても丁寧に作り込まれている。音楽のセンスも良かった。
石油の採掘屋の一生を描いているのだけど、一人芝居と言っても良いぐらい。理由はわからないが、何故か目が離せない。得も言われぬ「危うさ」を纏いながら演技をしている感じ。「アンタッチャブル」のロバート・デ・ニーロみたい。あれも凄かった。
ラストシーンは圧巻。主人公の狂気に当てられて気持ち悪くなるぐらい。
ただ、よく考えてみれば主人公は狂っていたのか?ある一面からみれば、「金を手に入れ、神を殴り殺した」のだろう。だが、見方を変えれば「金に取り憑かれることなく金を手に入れ、神に取り憑かれることなく神を殴り殺した」とも取れる。そういった意味では主人公は「狂った」のではなく「人間らしくなった」のであり、「金に狂い」、「神に狂った」のは主人公の周りにいた人間なのかもしれない。更に言えば、映画で描き出される彼の一生は、現代社会に対する強烈な皮肉とも取れる。主人公を狂人扱いすることが出来るほど、まともな人間なのかと。主人公が最後につぶやく「あぁ、終わった」という台詞が妙に心に残っている。考えすぎかしら。
カルト教壇の宣教師役のポール・ダノという役者さんは、リトル・ミス・サンシャイン自閉症(?)のお兄さん役を演じていた。どっちの役も気持ち悪いけど、良い役者さんになるような予感がする。人気は出ないだろうけど。