2008年テアトル宗村アワード
本当は2008年の年末に発表すべき類のモノですが、あれこれと考えている内に2009年も10日が過ぎてしまいました。
大抵の映画賞はその年に「公開された」映画のランキングになるのですが、テアトル宗村アワードは「観た」映画のランキングになります。中にはエライ昔の作品も含まれているので、注意が必要です。そして、まともな審美眼などは持ち合わせておりませんので、個人的な独断と偏見により、順位付けしております。
作品部門
5位までのランキングです。最優秀作品賞は『ノーカントリー』になりました。おめでとうございます。ありがとうございます。2008年最後に観た『ダークナイト』との一騎打ちでしたが、僅差で『ノーカントリー』の勝利となりました。直近に見た作品と競り合うと言うことは、思いのほか差は大きいのかも知れません。『ゼア・ウィルビー・ブラッド』も好みの作品なのですが、少し相手が悪かった。2位と3位の差は結構なモノがあります。邦画では『クライマーズ・ハイ』が唯一4位にランクインです。今年観た日本映画の中では、ブッチギリの一位です。あまりプロモーションを打ってないらしく、話題にも上らない作品でしたが、非常に良くできた映画だと思います。『WALL・E』は勘違いの可能性が高いです。悪い作品ではないのですが、観てからの時間があまり経っていないことが一番の要因である可能性が高いという意味で。
俳優部門
2008年は堤真一の年だったと思います。劇場公開された『クライマーズ・ハイ』、『容疑者Xの献身』はどちらも好演でした。比較的シリアスな役を演じることが多いみたいですが、実はコメディに向いているのではないかと思います。他の受賞者である、佐藤浩市、ソン・ガンホのように、2009年はコメディに挑戦して欲しいと思います。
残念賞
「惜しい」という意味ではありません。本当に「残念」だった作品です。一位の『チームバチスタの栄光』がダントツでした。コメントはありません。邦画が4作品ランクインする中、『グッド・シェパード』が洋画で唯一のランクインです。役者のギャラは2008年で一番高く付いた作品だと思いますが。
しかし、日本の映画は酷いですね。特に、制作陣の中にテレビ局と電通が入り込んでいる作品は平均的にヒドイと思います。
ノミネート作品
最後に、2008年に観た映画の一覧です。90本近く観ていたようです。2009年は100本を目標にしたいと思います。
- ダークナイト
- WALL・E
- TOKYO!
- アメリカン・ギャングスター
- トロピック・サンダー/史上最低の作戦
- ハッピーフライト
- パラノイドパーク
- ダージリン急行
- チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
- ハンサム★スーツ
- HEROES/ヒーローズ シーズン2
- CUBE
- ヒトラーの贋札
- ギター弾きの恋
- 容疑者Xの献身
- それでも生きる子供たちへ
- ゼア・ウィルビー・ブラッド
- クローバーフィールド
- チームバチスタの栄光
- 美しき野獣
- 春の日は過ぎゆく
- 大統領の理髪師
- 南極日誌
- ミルコのひかり
- 家族の誕生
- 姑獲鳥の夏
- Inside Actors Studio
- トニー滝谷
- 再会の街で
- 迷子の警察音楽隊
- みんなのいえ
- earth
- その名にちなんで
- ノーカントリー
- バンテージ・ポイント
- クライマーズ・ハイ(映画版)
- 4分間のピアニスト
- 崖の上のポニョ
- クライマーズ・ハイ(NHK版)
- 潜水服は蝶の夢を見る
- ジェシー・ジェームズの暗殺
- 震度0
- 宇宙戦争
- ラヂオの時間
- トランスフォーマー
- クワイエットルームにようこそ
- 殺人の追憶
- 題名の無い子守唄
- ONCE ダブリンの街角で
- 告発
- テラビジアにかける橋
- しゃべれどもしゃべれども
- サイドカーに犬
- 天然コケッコー
- 自虐の詩
- オリヲン座からの招待状
- 父の祈りを
- 間宮兄弟
- ライフ・イズ・ビューティフル
- カンナさん大成功です
- ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還
- ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔
- ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間
- グッド・シェパード
- マジックアワー
- サルバトールの朝
- ショート・カッツ
- 大日本人
- HEROES
- 21グラム
- 砂時計
- ディアハンター
- 赤ちゃんの逆襲
- 300
- ナンバー23
- ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
- JSA
- パラダイス・ナウ
- デスプルーフ
- オーシャンズ13
- 舞妓Haaaan!!!
- SiCKO
- キサラギ
- マザーテレサ
- 東京タワー
- レミーのおいしいレストラン
- 犯人に告ぐ
- ニュースの天才
4ヶ月、3週と2日
藤沢のスターバックスでコーヒーを飲んでいると、隣の席で外国の女の人と日本人のオッサンが、一生懸命話している。悪いとは思いながらも、耳はドンドン大きくなる。どうもロシア語を話しているようで、奥さんも「ダー、って言ってたからそう思うよ」とのこと。定年退職後に一念発起してロシア語を学ぼうと思ったのだろうか。それにしても、何故ロシア語なのだろうか。日本人にとっては、アラビア語と並んで最も習得の難しい言語だと聞いたことがある。僕が卒業した大学でも、あまりの難しさに生徒が出席しなくなってしまい、ロシア語のクラスが解散になったという話も聞いた。あのオッサンが純粋な向学心でロシア語を勉強しているのなら結構なことであるが、33歳の男の目には、あのオッサンの後ろにロシアンパブの影がチラついて仕方がないのである。純粋な向学心よりも、強力なモチベーションなのかも知れないが。
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2007年のカンヌ映画祭でパルムドールを獲得した作品。同じ年のエントリー作品には、「ノーカントリー」がある(これはオスカーを獲っている)。他にも、「潜水服は蝶の夢を見る」とか「パラノイド・パーク」なんかがエントリーされている。その中でパルムドールを獲得したのだから、相当凄いのだろうと期待して観た作品。予告編も何度か観たが、面白そうな感じだった。
本当に意味が分からなかった。タイトルからも想像が出来るように、ある女の子の中絶を巡る騒動を描いているのだが、結末があまりに唐突。エンドロールを観ながら、良かった点を思い返してみたが、5秒ぐらいで諦めた。良い・悪いの評価以前の問題で、物語として何を語ろうとしているのかが、今でも理解できない。
手持ちカメラ、長回しを多用しているので、スクリーンからは不穏な感じが滲み出ている。映像もトーンが暗めで、観ているだけでハラハラする。この辺りは、監督の意図するとおりの演出なのだろう。中絶をする女の子の超無責任っぷりと、それを助ける女の子の歯を食いしばっている感じが良く出ていて、演技も大した物だと思う。ただ、結末が本当に唐突で、一瞬何かの間違いではないかと思うほど。劇中に散りばめられていた、伏線(のようなモノ)は一切使われることなく、何の説明もなくスクリーンが暗転する。
これだったら、「ノーカントリー」の方が良かったんじゃないのって思う。
人のセックスを笑うな
タイトルを観て、借りることを一瞬ためらってしまった。中学生ではあるまいに。精神年齢は小学生レベルですがね。
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原作のある映画らしいが、原作は読んだことがない。映画を観た後も、読む気にはなれない。
永作博美と蒼井優が出演している。永作博美は自由奔放な大人の(魔性の)女性を、キッチリと演じきった感じ。蒼井優は(恋に破れた)片思いの大学生を、演技なのか素なのか分からないぐらいに自然に演じている。どちらも好演。蒼井優はTシャツよりもセーターが似合うと思う。
引きの映像、固定カメラ、長回し。3点セットで揃っている上に、上映時間も2時間オーバー。モラトリアムの空気が充ち満ちている地方の美術大学が舞台となると、否が応でも映画の後半はダレ気味になってくる。でも、この映画のウリは、その「ダレ気味」な空気感だと思うし、監督もそれを意図して、あえて長めにカットを切っているハズ。普通の映画と同じ感じでカット割りをすると、松山ケンイチと蒼井優のプロモーションビデオになってしまう。そんなモノを金払ってまでは観たくない。
ラストシーンは結構良かった。監督はこのシーンを取りたかったのではあるまいか。
グエムル
年末年始の特番ラッシュにウンザリ。学生の頃やっていたビデオ屋店員。年末年始が異常に忙しかった理由が、社会人になって身に染みて理解できる。「テレビが面白くなくなった」と声高に叫ぶ人もいるけど、年末年始の特番は、15年以上前から面白くなかったのだ。あと、再放送がやたらと多いのは、テレビ業界の深刻な不況を良く表していると思う。
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「殺人の追憶」に引き続き、ポン・ジュノとソン・ガンホがコンビを組んだ映画。期待せずにはいられない。日本では「モンスターパニック」映画のようなプロモーションがされていたので、そのつもりで観ていたのだが、鑑賞後にどれだけ考えても、「コメディ」にしか思えなかった。
確かに、得体の知れない怪物が出てくるし、その容貌はゴジラよりも怖い。ゴジラみたいな現実離れした大きさではなく、4トントラックぐらい大きさのの半魚人が素早く動き回る姿を想像すればよろしい。その意味では確かに怖い。が、それを取り巻く人間を切り取る視点、つまり監督の視点がシニカルなのだ。「モンスターパニック」を期待して映画館に足を運んだ人は、笑って良いものか迷うのでは無かろうか。「殺人の追憶」でも、幾つかそんなシーンがあった。この監督のクセなのだろうが、個人的には好きなクセである。
ソン・ガンホは間抜けなお父さん役で出演。相変わらずの好演。怪物はロード・オブ・ザ・リングのCGチームが、竹中直人をモチーフにして作ったとか。怪物のモチーフにされる人間も複雑な心境だと思うし、人間をモチーフに怪物をモデリングできるクリエイターも大した物だと思う。
ちなみに、タイトルの「グエムル」というのは、日本語で「怪物」という意味。「グエムル」という名前の怪物、ではなくて、「怪物」。タイトルから受ける印象は、日本と韓国では、エライ違いだ。日本で大コケした原因の一端はこんな所にもあるのではなかろうか。もちろん一番の原因は、イケメン韓流スターが出演していないこと。韓国映画が全て日本でヒットする訳がない。
神の火
高村薫が続きます。ブックオフで大量に買い込んだ高村薫シリーズも、コレを読んでしまえば、一作品を残すのみとなります。この後はどうしようか悩むところ。他の作家に移動するか、それとも高村薫の全作品制覇を目指すか…。高村薫は文庫化に当たって、大幅な加筆修正を行うため、新刊版と文庫版では、印象がかなり違う作品になってしまうことが多々あるらしい。高村薫フリークの人たちは、
「両方読むだろ、普通」
となるらしいのですが、まだそこまでは行かないなあ…。
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「リヴィエラを撃て」と同系統の、海外諜報機関モノ。国内が舞台で、登場人物は殆どが日本人(主人公はロシア・日本のハーフ)なので、「リヴィエラを撃て」に比べて、かなり読みやすかった。登場人物一覧が付いていなくても、全く問題なし。3日程度で読了した。
ただ、この本を読んでいて気がついたことがある。僕自身、スパイモノを読んでも心が躍らない、という点だ。「リヴィエラを撃て」を読んでいる最中から、薄々気付いていたのだが、この本を読んで確信に変わった。主人公が色々な諜報機関の狭間で、どれだけ狡猾に立ち振る舞うか。諜報機関と主人公の騙し合い。この手の作品が好きな人は、その辺りのポイントで心が躍るはずだと思う。が、僕は全く心が動かなかった。主人公が、別のロシア人スパイを懸命に助けようとするメンタリティも理解できなかったし、物語の最後で、建設中の原子力発電所を襲撃する理由も理解できなかった。「リヴィエラを撃て」でも、主人公のIRAテロリストを懸命に助けようとするCIAエージェントが登場する。正直言って、「何故そこまで?」という疑念が消えることはなかった。
こういう心理を理解できないと言うことは、物語に入り込めていない、ということだろう。文章のせいではなく、物語の設定と僕自身の好み関する根本的な問題だ。
「照柿」の印象が強すぎるせいだろうか。重厚な文体の中で、登場人物が地面を這い回るように動く。あの作品が高村薫の真骨頂である気がする。