4ヶ月、3週と2日

藤沢のスターバックスでコーヒーを飲んでいると、隣の席で外国の女の人と日本人のオッサンが、一生懸命話している。悪いとは思いながらも、耳はドンドン大きくなる。どうもロシア語を話しているようで、奥さんも「ダー、って言ってたからそう思うよ」とのこと。定年退職後に一念発起してロシア語を学ぼうと思ったのだろうか。それにしても、何故ロシア語なのだろうか。日本人にとっては、アラビア語と並んで最も習得の難しい言語だと聞いたことがある。僕が卒業した大学でも、あまりの難しさに生徒が出席しなくなってしまい、ロシア語のクラスが解散になったという話も聞いた。あのオッサンが純粋な向学心でロシア語を勉強しているのなら結構なことであるが、33歳の男の目には、あのオッサンの後ろにロシアンパブの影がチラついて仕方がないのである。純粋な向学心よりも、強力なモチベーションなのかも知れないが。

2007年のカンヌ映画祭パルムドールを獲得した作品。同じ年のエントリー作品には、「ノーカントリー」がある(これはオスカーを獲っている)。他にも、「潜水服は蝶の夢を見る」とか「パラノイド・パーク」なんかがエントリーされている。その中でパルムドールを獲得したのだから、相当凄いのだろうと期待して観た作品。予告編も何度か観たが、面白そうな感じだった。

本当に意味が分からなかった。タイトルからも想像が出来るように、ある女の子の中絶を巡る騒動を描いているのだが、結末があまりに唐突。エンドロールを観ながら、良かった点を思い返してみたが、5秒ぐらいで諦めた。良い・悪いの評価以前の問題で、物語として何を語ろうとしているのかが、今でも理解できない。

手持ちカメラ、長回しを多用しているので、スクリーンからは不穏な感じが滲み出ている。映像もトーンが暗めで、観ているだけでハラハラする。この辺りは、監督の意図するとおりの演出なのだろう。中絶をする女の子の超無責任っぷりと、それを助ける女の子の歯を食いしばっている感じが良く出ていて、演技も大した物だと思う。ただ、結末が本当に唐突で、一瞬何かの間違いではないかと思うほど。劇中に散りばめられていた、伏線(のようなモノ)は一切使われることなく、何の説明もなくスクリーンが暗転する。

これだったら、「ノーカントリー」の方が良かったんじゃないのって思う。