沈まぬ太陽
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会社に入社して2人目の上司が、山崎豊子ファンだったらしい。会社で昼飯を食いながら、当時新刊だったこの本を読んでいた。僕は山崎豊子の作品なんかは読んだことがなく、名前さえも聞いたことがなかった。そのことを上司に話すと、がっかりした様子で「世代間格差以前の問題だ・・・」と言っていた。ちなみに、今思い返しても尊敬できる唯一の上司だった。
その後、僕は相方さんと出会い、当時ドラマの再放送をやっていた、「白い巨塔」の解釈について初めて喧嘩をした。まさかこんなことで言い争いになるとは思ってもいなかったので、どんな風にして話をまとめればいいのか皆目見当もつかず、事態の収束まで相当な時間を費やした。
そんなこんなで、少なからず山崎豊子とは縁があり、改めてこの小説を読んでみた。
まず、この小説のモチーフとなる人が実在するということに驚き。フィクションとしか思えないぐらいに過酷な会社からの嫌がらせに耐える人が主人公なのだが、「過酷」という言葉が陳腐に聞こえるぐらい過酷。その嫌がらせに耐える人も見事だけど。普通だったら、辞表を叩き付けて上司の顔に唾を吐きかけても良いぐらい。
あと、ナショナル・フラッグ・キャリア、分かりやすく言えばJALってひどい会社だなーと。最近はANAに押されて、事故とか不祥事が面白いぐらいに連発で、それじゃあ旅客数が減るのも当然だわ、とほぼ全ての人が思うぐらい*1にダメな会社だったけど、その素養はずいぶん昔から醸成されてきたのかと、ある意味納得した。
5巻もあるので、なかなか手が出しにくいと思うが、読む価値はあると思う。1巻を読み終わった後に「無理」と思えば、そこで止めればいいのだし。3巻あたりからジワジワ出てくるドライブ感は、あまり他の本では味わえないぐらいに秀逸。やっぱり実際の人を幾度となく取材して積み上げたリアリティは、フィクションにそう簡単には負けないんだなと実感した。