ハッピーフライト


近くの映画館で上映していたので、試しに観てみた。僕は矢口史靖監督の作品は『ウォーターボーイズ』しか観たことはなかったが、奥さんは『スウィングガールズ』も観たことがあるらしい。
ふんだんに飛行機に関するトリビアが登場するので、「へぇー」とか「ほぉー」と感じることは確かなのだが、これを映画の出来と勘違いするのは良くない。脚本の舞台について調べ上げることは、脚本家には当然求められる仕事だと思う。矢口監督は、そこで明らかになったディテールの部分を脚本の中心近くに据えて、シナリオを書き上げただけだ。そんな理由からか、それ程面白くなかった。飛行機を題材に取り上げた以上、飛行機が落ちることは(ほぼ)あり得ないので、物語の結末は決まっている。飛行機が落ちる映画を航空会社の協力の下で撮ることなんて、よほどの大御所でもない限り不可能だ。監督は「この映画を当初はパニックムービーにしたかったが、取材を進めるにつれて飛行機に関わる人たちの映画を撮りたいと思うようになった」、というのを何かの雑誌で読んだ覚えがある。プロデューサーや制作委員会から猛反対されて、飛行機に関するトリビア映画になったというのがコトの真相ではなかろうか。
話の流れが『ウォーターボーイズ』と殆ど変わっていないので、かなりガッカリした。デビュー作と変わっていないのだから、言い方を変えれば「劣化」である。これが監督の好みなのかもしれないが、これでは近い将来に「ネタ切れ」を迎えてしまうのではないか。テレビ局や広告代理店に囲まれて消費され尽くす前に、自分の撮りたい映画を撮った方がいいと思う。