パラノイドパーク


あまり話題にはならない監督さんだけど、個人的には好きなので。好みの分かれる作品を取ることは間違いないし、興行的にはまず成功しないことは理解できるけどね。

作品全体に浮遊感が漂う。フワフワとして落ち着かない感じ。主人公アレックスの「1.5人称」的な心理状態を表しているのだろう。不意にカットバックの使われ方も、一見乱雑に使われている感じもするが、映像の浮遊感と相まって、主人公の落ち着かない心情を良く表していると思う。
アレックスは意図的ではないにせよ人を殺してしまう。その事件の顛末をアレックスの視点から描いているんだけど、被害者(鉄道警備員)に関する描写は、ほぼ一切なかった。ただ、登場して殺されるだけ。事件に関する描写も驚くほど少ない。結果として、アレックスは、悪いことをしていないような印象を受ける。

エレファントで描かれた銃乱射事件、パラノイドパークで描かれた殺人事件。どちらも共通して、淡々と事件が描かれている。当事者、又は、それに近い立場の視点から描かれているにも関わらず、スクリーンは静かだ。監督の好みかとも思っていたが、この映画を観て、何か意図が隠されていると考えはじめた。
つまり、監督は忠実に主人公の目に映る風景を撮ろうとしているのではなかろうか、と思い始めた。目の当たりにしているコトの重大さが主人公には理解できていないのだ。主人公の視点から被害者に関する描写が一切なされなかったのがその証左ではなかろうか、と。

こんな小難しいことを考えさせるような映画なので、配給会社もプッシュしないのかしら。