赤めだか

赤めだか

赤めだか


以前から気になっていた本。思い切って購入。
立川談志という希代の噺家に対する愛や憧れを書いた本。著者が噺家になるまでを書いた本とも読める。でも、前編にわたって師匠への愛が溢れているように感じる。弟子から「人格は最低だが芸は最高」と公言されるぐらい、ある一面から見ればロクでもない人間なのだ。それでも惹かれ続けたのだから、相当に魅力的な人間なのかなとも思う。本を読み終えて初めてわかったことなのだが、立川談志という人間がそれほど悪い人間ではないようにも思う。「芸は最高」と呼ばれるだけの理由は、山のようにあるのだろう。

最後まで一気に読み切った。そんじょそこらの作家なら裸足で逃げていく位のレベル。文章にリズムがあるので、何時間でも読み続けられそうな気がする。噺家という職業がなせる技なのか。恐ろしいぐらいの本を読んでいるんだろう。話も面白いし、人生論としても秀逸だと思う。最近はやりのLifeHackなんかよりもよほど役に立つ。部下を抱える管理職の方々は、必ず読んだ方がいい。眉間をぶち抜かれるようなフレーズが連発。以下、印象に残った言葉を引用しておく。

よく芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えたとおり覚えればいい。盗めるようになりゃ一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に論理がないからそういういいかげんなことを云うんだ。

型ができていないヤツが芝居をすると形無し。メチャクチャになる。型ができているヤツがオリジナリティを出せば、型破りになる。

己が努力、行動を起こさず対象となる人間の弱みを口であげつらって、自分のレベルにまで引き下げる行為、それを嫉妬と呼ぶんです。

よく覚えておけ。現実は事実だ。そして現状を理解、分析してみろ。そこにはきっと、何故そうなったかという原因があるんだ。現状を認識して把握したら処理すりゃいんだ。その行動を起こせないヤツを俺の基準でバカという。

相手の進歩に合わせて教える。相手の進歩以上に教えると、混乱をする。学ぶ楽しさ、師に誉められる喜びを知るのが第一歩。

何も特別なことを言っているわけではない。でも、ココまで堂々と言われると、ぐうの音も出ない。