容疑者Xの献身

東野圭吾原作の小説を映画化。原作の感想はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/sonemura/20080816/1218881439

茅ヶ崎の映画館で観たのだけど、連休中ということもあり、ほぼ満席。原作の人気と言うよりも、ドラマの人気だとは思うけれど。

この小説の主人公に福山雅治がキャスティング。少しイメージが違うんだけど、まあ良し。さて、映画化されるに当たり犯人役には誰が。僕の中では香川照之。その前に、奥さんの「がっかり具合」を見ていると、映画館に行かない可能性が大。

福山雅治の相手役としてキャスティングされたのは、堤真一。原作を読んだときには、香川照之と予想していたのだが、好みの役者と言うこともあり観に行くことにした。個人的な好みも影響しているかもしれないが、映画として成立しているのは堤真一の演技によるところが大きいような気がする。それがなければ、2時間枠のスペシャルドラマでも問題ない。少しキツイ言い方をすれば、主演・福山雅治の演技は映画向きではないということだ。「金を払う価値もない」とまでは言わないが、スクリーンで観るには力量不足だ。

ドラマの雰囲気を期待して映画館に足を運んだ人は、かなりガッカリしたのではないか。柴咲コウと福山雅治のコンビ芸は、ほぼ出番なし。福山雅治と堤真一を中心に話が進むからだ。この組み合わせ故に堤真一の巧さを際立たせる結果になったのかもしれない。原作執筆時の想定通り佐野史郎をキャスティングしたらどうなったか?かなり「濃い映画」になることは間違いない。一般受けはしないと思うが。

堤真一クライマーズ・ハイで演じた役と、この作品で演じた役はほぼ同年齢になると思われる。堤真一にとってもほぼ同年齢、40歳前後の設定だ。しかしそのキャラクターは正反対。クライマーズ・ハイでは脂の乗りきった新聞記者であり、この作品では心に絶望を抱く数学教師役。これら二つの役を見事に演じきるのだから、大した物だと思う。先に述べたとおり、彼の演技がこの作品を映画として支えている。

小説の映画化としては、及第点というところ。原作はミステリー小説なので、話の勘所は当然、

  • 事件のトリック
  • 犯人の動機

の2つになるのだけど、その両方を過不足なく押さえているからだ。ただ、両方とも「押さえた」レベルに終わっているのが残念なところでもある。もう少し踏み込んでいたら映画としての厚みが出てくるのでは、と思う。原作でも、これらのポイントは主人公・湯川により指摘されるだけだが、クライマックスなのだから、もう少し時間を割いても良かったはず。