トニー滝谷


僕が結婚する前の話。その頃僕は奥さんと一緒には住んでいたけど、結婚はしていなかった。初めて家に招いた友人から観るように勧められた映画がこれ。僕は奥さんと一緒に近くのレンタルビデオ屋に行き、出来上がったばかりのホームシアターで一緒に観た。二人の評価はすごく高かった。
最近、実家から村上春樹の本を送ってもらい、少しずつ読み直している。この映画の原作は、とても映画の原作になるようには思えないぐらいの短編で、読み終わるのに30分もかからない。確かに映画としても短編の部類に属するものだけど、友人からこの映画の話を聞かされたときに、びっくりしたことを覚えている。奥さんも昨日(さんざん勧めてようやく)原作を読んだ。印象を聞いてみると、やはり映画になるとは思えないとのこと。
出演している二人の役者が、どちらも良い演技。特に僕が抱いていた宮沢りえの印象は、この映画の前と後ではガラッと変わってしまった。イッセー尾形の演技は圧巻の一言。撮影の手法も斬新で、音楽も秀逸。正直言って、難癖の付けようがなかった。
わざわざ、昔に観た映画について書いたのには理由がある。この映画を薦めてくれた友人が、近く結婚するのだ。おめでとう。