時が滲む朝

時が滲む朝

時が滲む朝


芥川賞受賞作。奥さんが単行本で購入。字の大きさにびっくり。小説にコストパフォーマンスを持ち込むべきではないというのは理解しているつもりだけど、これはあまりにも。
作者は中国人の方。日本語を母国語としていない作家さんが、芥川賞を受賞するのは初めてらしい。僕も同じで、日本語を母国語としない人が書く日本語の小説を読むのは初めて。実は、海外の小説が日本語に翻訳されたものを読むのはあまり得意ではない。特に、純文学ぽいものは全くダメだった。そんな風にならないかと、少し心配しながら読み始める。
結果的には、意外と良かった。期待値が低かったこともあってか、評価は高めになった。特に、物語の後半部分。小説の展開としてはベタだけど、読ませるだけの文章の力はあったのではないか。東京都知事はどのように評価したのか気になるところではある。
ただ、細かい部分で読みづらい表現があったのも事実。個人の先入観なのかもしれないが、辞書からそのまま引っ張ってきたような表現が多少見受けられたり、全く逆の形容詞を続けて使ってみたり。風景描写に使われる表現は恐ろしいほど古めかしいのに、登場人物が話す言葉が恥ずかしいぐらいに若者の言葉だったり。描かれている時代性と、その中にいる登場人物の対比を際立たせるために、あのような言葉遣いを意図的にしたのかも。考え過ぎかも。
今回は、短編の小説。このままの文体で長編小説に挑まれると、読者としては非常に疲れる。短編だから許される表現手法だと思う。