白夜行

白夜行

白夜行


黒い。全体的にドス黒い。
小説を読むと、当然頭の中にその情景を浮かべるわけですが、この小説の場合、非常にクリアにその情景が浮かびました。小説としては素晴らしい事だと思いますが、同時に、諸手を挙げて「スバラシイ」と言わせない何かが備わっています。
それもこの小説を語る上での素晴らしさの一つだとは思うのですが・・・。


巧い言葉が見つからないのがモドカシイのですが、「黒く澱んだモノ」をオブラートで何重にも包んだ様な、得体の知れない気味の悪さが、小説のありとあらゆる所から、どうしようもなく漏れてきている感じです。


とは言え、消化不良と言うわけではありません。
個人的には満点のエンディングかと思います。賛否両論あるとは思いますが、あれ以外の結末を想像できない。そういった意味で爽快感は抜群なのですが、同時に後味の悪さも満点です。


矛盾している感想であることは理解できるのですが、こういう感触しか残らなかったのも事実。他には経験できない読後感かもしれない。