重力ピエロ

重力ピエロ

重力ピエロ


僕自身、お構いなしに本を読むというタイプではなく、「作家読み」のタイプ。文学系の本と言えば、村上春樹村上龍ぐらいしか読まない。山田詠美とかにも挑戦してみたけど、どうもしっくり来なかった。とは言え、このままでは視野が狭くなることは確実だし、定期的に他の作家に挑戦しなければならない。好みの作家が見つかればいいなとは思っているのだが、これがなかなかうまくいかない。そして今回もうまくいかないかもしれない。


最近話題の伊坂幸太郎の作品。直木賞候補にもなった、同氏の出世作らしい。相方さんも興味があったらしいので、思い切って買ってみた。相方さんは先に読み終わり、続いて僕が読んだ。読んだ後、二人が抱いた感想は同じだった。


「う〜ん、惜しいなぁ」


宮部みゆきの書く文章からは独特の血生臭さが、本当に臭ってくる。夜のシーンが描かれているところを読んでいると、僕の視界の本以外の部分は本当に暗くなる。物語が佳境に差し掛かれば、時間が圧縮されたみたいに、あっという間に時間が早く進む。これが作家の力量だと思う。一流と呼ばれる作家の人たちに必ず備わっている能力は、「ストーリーテラーとしての能力」であり「脚本家としての能力」では無いように思う。一流の作家は、ひどく退屈な日常であっても、それを読者に届けるときには、何かしらの意味を持った非日常にしてしまうのだ。
でも、この本を読む限り、伊坂幸太郎には「ストーリーテラーとしての能力」が、もう少し足りないように感じられた。ストーリーの展開はすごく良かった。ミステリーとしての魅力は充分なんだけど、どうしても文体の軽さが引っかかる。意図して軽くしているのではないだろう。
とは言え、作品を生み出す毎に文体なんていうものは、どんどん変わっていくものだし、最新作では、もっとドッシリした文体になっているかもしれない。
もう一作本を買ってあるので、それを読んでから判断することにしても遅くはないかな。